5月25日

２０２４　島が花の香りに包まれる季節のジャム屋日記

　柑橘産地である周防大島、島の春は香りの季節です。ほとんどの品種の柑橘類はだいたい５月上中旬に開花のピークを迎えます。自家農園の柑橘畑では白い小さな花々がいっせいに咲き乱れ、ミツバチたちが忙しそうに飛び回ります。そしてその柑橘類の花々から漂う香りは、シトラスの香でありながら、皆さんがよく知っている果実の香りとはまた違った華やかな香り。そんなシトラスフラワーの香りのベールで島全体が包み込まれるのがこの季節です。車の窓を開けてドライブしているだけで最高に贅沢な時間が楽しめます。

下の写真たちは、左から「ジャムズカフェからの桜と瀬戸内海の眺望」「レモンチェッロプラジェクトで２０２１年に植えたレモンの樹に咲いた小さな花々」「ブルーベリー園入口に咲いているバラの花々」です。早春の時季から徐々に海の色が鮮やかな青色にかわり、島の季節は初夏へと続いていきます。

　さて、春も５月になると、柑橘シーズンもいよいよ終盤。２月３月頃は甘いかんきつ系が多い一方、４月５月になると爽やか系柑橘が多くなってきます。左下の写真から順に説明をすると、、、一番左は「黄金柑（おうごんかん）」の処理風景。黄色い柑橘はどことなく酸味や苦味が多そうなイメージを抱きますが、なんと黄金柑はみかん並みの甘さ。香りもしっかりしているのでマーマレードにはうってつけの柑橘です。そのとなりの写真で収獲用テボに入っているのは島を代表するブランド柑橘「せとみ」。じょうのう（房の皮）がうすく柔らかく、ゼリーを食べているような柑橘です。そんな特色を生かしたローズクラウン（当店の最高峰コンフィチュールシリーズ）に仕上げたのが、その右隣の写真の一品。そしてその隣は自家農園で栽培している縦長の珍しい柑橘「弓削剽柑（ゆげひょうかん）」。この弓削剽柑はグレープフルーツに近いさっぱりと爽やかな味と白いマーマレードに仕上がるのが特徴。そこでこの春は奥出雲薔薇園さまの食用薔薇とコラボして、薔薇の花びらが舞った香り高い一品に仕上げました（右端の写真）。「柑橘果樹とともにある営み」の楽しさが凝縮しているのがこの季節の醍醐味です

　一方、春は赤い果実のシーズンでもあります。赤い果実として一番最初にくるのは「いちご」。今春も自家農園の苺ハウスでは赤い宝石たちがたわわに実り、完熟したものから日々ジャム工房に運ばれてきます。二つ目は高原の真っ赤な「ルバーブ」。広島の山地で栽培されているルバーブが工房に届くのもこの季節。春のルバーブは瑞々しくフレッシュな風味。繊維質がたっぷり多いので、少し柔らかめに煮詰めていきます。三つ目は、血のように赤い「ブラッドオレンジ」。こちらはさらに鮮やかな赤みを創るため、収穫後少しの期間貯蔵して原料果実として使用します。今年は特に真っ赤なブラッドオレンジに仕上がりました。そのブラッドオレンジを3月ごろに仕込み、最近仕上がってきたのが「瀬戸内レモンとブラッドオレンジの生チェッロ」（チェッロ：柑橘リキュール）。味も香りも抜群、そして見ていると吸い込まれるような赤色のリキュール酒に仕上がりました。是非ご賞味あれ。

　そして最後の赤い果実は５月末ごろから届く、「完熟とまと」。周防大島と本州を結ぶ大島大橋を島から本州側に渡ってすぐの所に由宇（ゆう）と言うトマト産地があり、その地域のトマト農家さんから今年も真っ赤に熟したトマト達が届き始めました。５月の月次新作発表時には間に合いませんでしたが、　６月の月次新作発表には登場予定！こちらも是非楽しみにしていてください。

　話は変わりますが、コロナ禍の始まりとともにレモンチェッロ（レモンのリキュール酒）の酒造事業をお客様参加

型で立ち上げるプロジェクトを始動させました。そのレモンチェッロプロジェクトの延長線上で企画した宿泊事業（島の柑橘栽培の祖、藤井彦右衛門（ひこえもん）の息吹が感じられる古民家を宿に生まれ変わらせる物語）がこの4月18日、ついに稼働を開始しました。宿の名前は「おん宿　古今せとうち」。早速、いろいろな地元メディアの方々にとり上げていただいております。残念ながらローカル番組ばかりで全国の方々には見ていただけない状況でした。そんな悩みを取材していただいたテレビ局の方にお話しすると、「ではYouTubeにアップしましょう！」となんとも気さくな返答をいただきました(笑)。是非下のQRコードから番組をご覧になってみてください。ちなみに、地域のメンバー参加型の宿とするため、地元の鮨職人のケータリングや、地元漁師の刺盛を楽しむことを提案しております（右下写真）。当プロジェクトにお力添えいただいた多くの方々にお礼を申し上げるとともに、島にお越しの際は地域の日常を愉しむために、是非ともご利用いただけますと幸いです。